良い動画の裏に潜む送り手と受け手のギャップ~OBOG会のリフレクションムービーの作成~

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はじめに

 皆さんこんにちは。橋本ゼミの青栁、高木、犬塚です。橋本ゼミでは11月30日にOBOG会が行われました。そこで私たちは撮影と動画編集に分かれて、OBOG会のリフレクションムービーを制作しました。
 今回私たちが制作したリフレクションムービーは、OBOG会の参加者に当日の振り返りを「お土産」として渡すことを目指しました。結果的には当日中に完成し、OBOGの方へお渡しすることが出来、視聴者の方々からは「いい動画だね」という評価を頂くこともできたので、めでたしめでたし…。なんてことはなく、
実は私たちの中ではこの動画は納得のいくものではなく、クオリティよりも間に合わせる事を優先した、いわば「仮動画」のようなものでした。にも関わらず、その評価を受けたという事は少なからず製作者と視聴者間でギャップが存在するということになります。
本記事ではそのギャップとは何か、また、ギャップを減らし、制作者の意図を伝える為にはどうすれば良かったのか?等について語っていきます。

⇩こちらは作成した動画の冒頭の約1分を抜粋したものです。

制作者側のエピソード

 今回、撮影者2人と編集者1人で役割分担を行い制作に取り掛かりました。そして、動画が完成し視聴者の感想を聞いてそれぞれ感じたことがありました。それは、「不完全燃焼だ」ということです。なぜ、不完全燃焼で終わってしまったのか、それは撮影者と編集者の完成イメージの不一致がありました。撮影者は「この素材使って欲しかった」と感じ、編集者は「もっと違う素材が欲しかった」と感じたわけです。さらに、お土産要素を叶えるためには当日から次の日までには完成させなければならないため、編集時間と素材のアップロード時間が少ない状態で完成させる必要がありました。その分、納得のいく形に仕上げられないというジレンマがあり、視聴時に「不完全燃焼だ」と感じました。しかし、作成者ではない視聴者に動画の感想を聞いてみると、「良い動画だった」「この時間で仕上げるのはすごい」といった好印象な感想をいただきました。ここで、視聴者と作成者の間でギャップが生まれます。我々作成者がこだわりを持って作った部分は視聴者には感じられなかったということです。

ギャップが生まれた要因

ではなぜ視聴者と制作者との間でギャップが生まれてしまったのでしょうか。

私達は、視聴者と制作者の間に完成された動画を見ることに対する目的の違いが原因だと考えました。

 動画を視聴する際、制作者にとって動画は作品を通じてメッセージや意図を伝えること、細かな編集ミスや表現の仕方などのプロセスをより意識します。しかし、視聴者は動画を楽しむことを大きな目的としています。また、制作のプロセスを知らず完成品のみを見て、全体的な印象に意識を向けているため、制作者の「もっとこうすればよかった」の部分は視聴者にとっては気にするポイントにはならないのです。そして、視聴者に制作者の伝えたい意図を意識しながら視聴してもらえるようになるのは、動画の目的が明確でイメージしたものを動画で分かりやすく表現できていないと難しいものになります。今回、私たちの作品を、「いい動画」で終わらせず、リフレクションとしての役割は果たすためには、両者間とのギャップを減らす必要がありました。

ギャップを減らすためには何をするべきか

 では、そのギャップを減らすためには、何をするべきなのか。大きく2つ考えました。まず、1つ目としてメッセージを明確にすることです。作成者が伝えたいメッセージが視聴者に届くには、そのメッセージを明確にし、繰り返し伝えることが重要です。つまり、作成者自身もメッセージを意識しながら撮影と編集を行う必要があったのです。例えば、今回のイベントでは初対面の参加者が多く、それぞれが固い雰囲気からイベントが始まりました。しかし、徐々に話が進み柔らかい雰囲気で会が終了します。その時間の流れや、参加者の表情の変化、撮影対象の変化などを表現することでリフレクションとしてのメッセージ性を作り出すことができます。

 そして2つ目に、イベントのワークショップなどの内容を理解するということです。今回は、OBOGと親交を深めるためのワークショップが複数組み込まれていました。それらのワークショップには考案者の意図が必ずあります。目的や意図を把握することで、リフレクションに必要な要素が理解でき、ワークショップの内容を理解してから撮影に臨むことで、どこで欲しい素材が撮れるのかをある程度予測することができます。加えて、ワークショップの内容を理解すると会場の配置などが撮影する際に不適切であると気付くことができます。そうすることによって、より表現の幅を広げることができます。

 この2つが視聴者と作成者とのギャップを減らすために必要なことだと学びました。では、この2つを実現するために効果的な方法は何なのか。それは、「絵コンテ」です。絵コンテ、いわゆる動画の設計図です。絵コンテは、脳内でイメージした映像を「絵」で表現し、「文字」で言語化を行います。各シーンのカメラアングルや、動き、登場人物の表情などを絵で表現することによって、映像の完成イメージを制作チーム全体で共有できるようになります。これらのアウトプットがあるか無いかは、動画のクオリティと、複数人で動画を作成をする際の円滑なコミュニケーションに繋がってきます。

最後に(結論)

 これまで「視聴者と作成者のギャップ」に関して述べてきましたが、動画を作成するにあたり重要なことは結論何なのか。そして、現在のように簡単な編集スキルでSNS上でバズる動画を作成できる状況下で、「それっぽい」動画から脱却するには何が必要なのか。今回の記事の中で、「言語化」と「コミュニケーション」というワードが多く書かれていたと思います。動画編集の技術力や想像力はもちろん重要ではありますが、映像を作るというプロセスの中でいかに言語化ができるか、その言語化した内容をチーム内で共有することができるかがカギになってくると、私たちは知ることができました。そして、次に動画を制作する際には絵コンテの作成に挑戦し、チーム内のコミュニケーションを視覚化することを意識していきたいと思います。そして、それらが十分に発揮することができれば動画のクオリティは自ずと向上するのではないでしょうか。

参考文献

村井明日香、「テレビ・ドキュメンタリーの制作者との意識・態度の違いに着目した大学生のメディア・リテラシーに関する研究」、東北大学大学院情報研究科、博士学位論文、2022年
https://tohoku.repo.nii.ac.jp/records/138468  (最終閲覧 2025.1.29)

執筆:橋本ゼミ13期生 青栁小春 犬塚就介 高木菜歩

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