法政大学の石山先生、ビジネスリサーチラボの伊達さんによる越境学習入門を読みました。
これまで多くの越境による学習に関する研究をなされてきた石山先生が、経営学の知見をもとにさまざまな事業を行なっている伊達さんと共に取り組まれた経済産業省による事業成果を踏まえて書かれた越境学習の入門書であり、総説書です。
越境学習をホームとアウェイを行き来することで「冒険人材」を育てるメカニズムとして、越境学習とはどういった学習なのか、越境学習にはどんなプロセスがあるのか、人材育成として注意すべき点はどこにあるのか?などが丁寧に記されています。
私は、本書は越境学習を人材育成研究および人材育成の手法としてどう取り入れるのか?について丁寧に丁寧に議論された内容だと感じました。
というのも、「学習の認識」と「人材育成の手法」とはイコールではないということです。
越境学習の場合には、ある成長した(学習した)人について調べていたら「越境」を行なっていた。研究の結果、越境によって学習していることがわかった、という認識の話があります。
じゃあ、越境させれば成長するのか、となりそうですが、そうではないのです。考慮すべき変数が大量にあるわけです。
本書では、人材育成の立場からどう「越境」を活用していくか、人材育成に活かしていくのか?について。丁寧に影響を与えるであろう変数を特定していき、その対処法も説明されています。その成果がルーブリックという形に結集されているように思います。
例えば、ただ「越境させる」というのではなく、越境学習者の状況に合わせた周囲のサポート(手厚いケアをするのとは違います。詳しくは本書を)が必要であることが述べられている点に著者らの強いメッセージを感じます。
とても勉強になりました。
そして、この本について学術的に議論を行なっていくことがこれから先の研究や実践の進化につながっていくのだろうと思っています。そこには私も関与していきたいです。