現在、3期生が卒業論文に取り組んでいます。最後の最後の所までやってきています。後、数日が最後の追い込み。少しでも良い論文にして欲しいと思います。今年は、7テーマ8名がチャレンジしています。
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出石芽生 坂本大樹 「沿線価値活性化においての比較~産学チャレンジプログラムの提案において~」
宍戸健太郎 「ワークショップ運営補助スマートフォンアプリの開発」
柴村宏輝 「これからの社会で求められること 2025年のテクノロジーと社会の変化を踏まえて」
武居勇介 「なぜ大学生はアルバイトにのめりこむのか」
露木史織 「結婚とお金についての実態 インタビュー調査を元に」
平戸彩香 「結婚とお金の関係 本当に結婚にお金はかかるのか?」
吉澤大志 「体験型ゲームの新たな可能性 ワークショップとの比較を通じて」
※タイトルは、仮題です。
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目次
論文概要
出石・坂本論文は、神奈川産学チャレンジプログラムにて提案した内容について、様々な地域活性化事例と比較する事により、地域活性として取り組まれている事例が抱える課題を明らかにするとともに、自らが行った提案を批判的に振り返ることを目指しています。ともすれば、企業に提案する提案は、「評価されること」を目指してしまいます。また、「評価されなかったもの=ダメなもの」と捉えてしまいがちです。既に手を離れているものだからこそ、敢えて批判的に振り返りを行うことで、企業コンペを学びの「きっかけ」とし、新たなテーマについて調べることや学ぶことにつながるという一つの実践でもあります。批判的な振り返りとして上がってきたのは、地域活性が抱える課題の多様性と「フィールドワーク」のときの視点についてです。結局、私たちは何が見えていたのか? そんな問に果敢に挑戦しています。
宍戸論文は、ワークショップ運営者に向けたスマートフォンアプリの開発を論文としてまとめたものです。ワークショップのファシリテーターが運営中に管理する「時間」に着目し、その性質により分類を行い、アプリ上で管理を支援することにより、ワークショップの際の認知的な負荷を減らすことを目的としたアプリの開発を行っています。限定した対象に向けたニッチなアプリとして、汎用的なものではできない機能を取り入れることを目指しています。ただ、「言うは易し行うは難し」です。実装の部分が大きな課題となりました。これまで、ないがしろにされてきたきらいがある「作ること」の意味についても、学習の観点から振り返りが行われています。
柴村論文は、自身の素朴な問題意識からスタートしました。それは、世の中が大きく変化するという話を聞くが、一方自分たちの周りで変化を前提とした行動が行われていないような気がした、というものです。しかしながら、その違和感を自分の言葉にすることができないというジレンマを抱えていました。今回、論文執筆に向けて、幾つかの未来予測を先行研究として調査することにより、未来がどのように描かれ、どのように変化することが予測されているのかを確かめると共に、それを自分の言葉として、自分の思考の一部にしていくことを目指しています。「こうすると良いらしい」を一旦脇に置き、自分だったらどう考えるかに挑む論文です。
武居論文は、大学生がアルバイトにのめり込んでいく実態を描き出そうとするフィールドワークに基づく論文です。大学生とバイトをめぐっては、様々な意見があります。「大学生になったら、バイトくらい社会経験としてやるべきだ」「大学生の本分は学業であり、バイトにのめり込むのは良くない」「大学は面白くないが、バイトは面白い」「ブラックアルバイトに騙される大学生」「就職活動ではバイト経験は評価されない」などなど。今回、様々な意見が交錯する場としてのアルバイトを「バイトが楽しい」という自らの経験とともに、誰が(何が)「楽しくさせているのか?」について、その「仕組み」に言及する論文です。自明だと思っていた小さな「ローカルルール」が持つ意義や権力関係について言及しています。チクセントミハイの「フロー」を援用しつつ、生々しい記述が迫ってくる論文です。
露木・平戸による2本の論文は、「結婚とお金」という同じテーマを別々のアプローチから迫る論文です。露木は、既に結婚している方へのインタビュー調査を元にし、平戸はアンケート調査を含む統計調査等のデータ分析からアプローチしています。元々、企業向けコンペにて同テーマに基づく提案を行っていた二人。今回は敢えて、同じテーマを別々の手法を用いて追加研究しています。2つの論文を合わせてみることにより、トライアンギュレーション(方法論的複眼)が行われている形となっています。それぞれが集めてきたデータが、一面では同じよう解釈をもたらし、またある面では別の解釈をもたらす。「結婚とお金」という身近でありながら、まだ遠い世界の話をどう料理し、そしてどういった違いが表れるかが楽しみな論文です。
吉澤論文は、橋本ゼミの伝統である体験型ゲームについて、ワークショップとの比較を元にして特徴や可能性を探求する論文です。体験型ゲームを学びの形態として捉えたときに、ゲームが持つ魅力と体験が持つ魅力を元にこれまで制作を行ってきました。しかし、もう少し体験型ゲームだからこそできることはないか、という点について、自らが体験してきたワークショップを比較することにより明らかにしていこうとしています。これまでにプラスした形での体験型ゲームの可能性を見出すことで、よりレベルが上った制作ができる知見が得られそうな予感がしています。
卒論を指導していて
同じような経験をしているとつい思ってしまうのですが、当たり前のように一人ひとり違います。それは、論文を読んでいて特に感じます。それぞれの違いがある。そして、その違いが論文を書いている中で際立っていくようにも思います。一方で、執筆しているメンバー同士は仲が深まっているようにも感じます(結構派手に喧嘩してますが)。
「やる意味」なんてことを聞かれたりもしますが、何よりも「自分には書ける」、「書きたい」、「知りたい」という気持ちで十分ではないかと思います。
苦しくも、楽しい日々です。そして、ゴールはすぐそこまで来ています。