先日、ある実務家の方と話をしている際に「内定者教育」をいつやるのかという話題になりました。
一瞬「?」となる話ですが、いくつかの前提を確認すると、この問は考えるものがあるなと思いました。
内定者教育自体を企業から考えてみると、新卒採用において内定を出した時期から、入社までの間に行う教育です。主に、入社後に行う研修を前倒しで行ったり、研修という言葉はついていますが自社への愛着を形成するために行われたりします。愛着という意味では、同期同士の横のつながりをつくるためのものでもあります。
しかしながら、今年の採用(16採用)については、政府の指示を元にした経団連による採用活動の後ろ倒し等により大きく変化しています。参考:経団連:「採用選考に関する指針」の手引きの改定について (2014-09-16)
リクルートキャリア社によれば、2015年6月1日時点での内定率は34.2%と前年の61.3%と比較して約半分ほどになっています。
「2015年6月度就職内定状況(2016年卒)」【速報版】 | 株式会社リクルートキャリア http://t.co/eV5T6llgDZ
— 橋本 諭(はしもと さとし) (@satoshi_hashimo) 2015, 6月 16
当然、この結果は景気が悪くなったという訳ではなく、採用活動の時期が変化したことを示しているものと読み取れます。例年は、大企業から採用活動を終了していき、その後中小企業が採用をしていくという流れがありました。言い換えると、大企業から先に内定者を確保し終わり、その後中小企業が内定者を確保していくということです。企業の担当者からすれば、ある時期に内定者を確保したら、それで仕事一段落、後は、内定を辞退されないようにするのが仕事になった訳です。それ故に、内定者教育という名前を借りた内定辞退の防止策などが行われた訳です。
しかし、今年は自社が内定を確保しても他社(特に大企業)が採用活動を継続しています。例年よりも内定辞退のリスクは高まっているといるわけです。今年は採用活動を止められないというような話もあるようです。
[ニュース]ジョブウェブ、【新卒採用企業調査】 ~16卒採用終了時期は「… – 『日本の人事部』
さて、このようにいつまでも採用活動を行っているとすれば、内定者教育も変化せざるを得ません。いくつかのことが考えられます。
1.内定者のうち実際に入社する人が少ないのであれば、コストの面から内定者教育を行う必要はあるか?
2.内定時期が異なるため、内定者教育を始める時期によっては受けられない人が出てくる
3.内定時期により入社までの期間が異なるため、何を行うのが効果的か?
これらのことは、内定者教育の時期や内容、いやそもそもの必要性についても考えるきっかけになっていることでしょう。採用活動の変更はこういった所にも影響を与えている訳です。
個人的に思うことは、採用時期の変更によって新卒一括採用という日本の採用の特徴に一つヒビのようなものが入ったのだと思います。いくつかの企業では、採用活動を終えられず年間通して採用活動を行い続ける企業もあるでしょう。その時、新卒一括採用のメリットのいくつかは失われます。今後の採用活動はより戻しを含め、大きな変化があることでしょう。
もう一つは、学生は企業に頼るのではなく自らキャリアを考える必要性が高まっているとも言えるでしょう。内定者教育をやりたいけれども、上記のもろもろの都合により出来ない。そう考えると、自ら考える必要性が高まるのでしょう。
そもそも「内定者教育」なんていらないという声も大学関係者からは聞いたりもしますが、良し悪しはともにあるものと思われますが、大学側へも何らかの変化がもたらされるのではないかと思います。