本書は、MITのスローン経営大学院の名誉教授であるエドガーシャインのHELPINGの翻訳版です。シャインといえば、キャリアアンカーに始まり、企業文化や組織文化、リーダーシップ、プロセスコンサルテーションなどでも有名な教授です。その、シャインが、「支援する人」や「支援される人」に向けて、支援するとはどういうことかを説いたものです。
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「人を助けたい」とはいうものの
こういうことを言う人は、“実は”たくさんいます。しかしながら、本当に人の「助け」になっている人は少ないでしょう。余計なことを言いすぎてしまったり、望んでいることをしてあげられなかったり、助けにならない助け(Unhelpful Help)になってしまうことが往々にしてあるわけです。
場合によっては、「こっちが折角助けてあげようと言っているのに、あいつと来たら」と、果たして支援をする気があるのか、自己満足のためにやっているのかわからないことが多々ある訳です。
本書では、支援をする側をワンアップ(一段高い位置)、される側をワンダウン(一段低い位置)と捕らえ、解説を行っています。事例として出されるのは、夫婦間、親子間であったり、教員と学生、コンサルタントとクライアントに至るまで様々ではありますが、それぞれに納得感がある解説がなされています。
アドバイスをくれと言われたら
本書を読んでいる際に、「アドバイスをくれと言われた時にどうするか」ということを考えました。
率直に答えるとすると、「アドバイスを返すこと」になるのでしょう。しかし、そういった時に真っ正直にアドバイスをすると、逆に攻撃を受けることが多いのではないでしょうか。
特に、言うべきか言わないべきか悩んでいるときに相手から「アドバイスをくれ」とでも言われた日には、「待ってました」とばかりにクリティカルな意見をしてしまい、関係を悪化させるのです。嫌われる上司とか、先輩、親の典型です。
一方でアドバイスをして欲しいという立場を考えてみると、アドバイスが欲しいのではないことがわかります。場合によっては、「頑張っている」と褒めて欲しかったり、「すごいね」と言って欲しかったりするわけです。
もちろん100%褒めて欲しいわけではないので、アドバイスをもらいたいとは思っているけれど、逆に100%アドバイスが欲しい訳でもないわけです。また、場合によっては、混乱してしまっていて何をしていいかわからないということもあるでしょう。
様々なことがあり得るかと思いますが、やはり「アドバイスをして欲しい」は罠だと言わざるを得ません。
今後どう生かすか
大学教員という立場からすれば、学生への指導は支援の一部といえます。また、今後研究を通じて企業にアプローチしていきますが、その際の何らかの働きかけも支援の一部といえるでしょう。そういった場面で生かせると思います。
そして、もっと個人的な話では、友人、知人、家族との関係の中で、支援をすることもあるでしょうが、それ以上に支援を受けることが多くある訳です。その際に、よりよい関係を築く一歩となるかと思います。
PS:本書自体は、数日前に読了していましたが、コンサルタントとはどうあるべきかを考えていて時間が経ってしまいました。かなりの文章を書きましたが、もう少し「寝かせて」置くことにします。それは、またいずれの機会に。一言だけ言うならば、現役の時に読んでいたら(厳密には、読んでいたので、きちんと読んでいたら)近視眼的にならずに、もっと、色々なことができたのではないかと思う。