目次
はじめに
こんにちは、橋本ゼミ10期生の山内・山口です。
私たちが所属する橋本ゼミでは学園祭の研究発表として「バーチャル道灌まつり」を公開しました。コロナ禍で中止を余儀なくした伊勢原市のお祭り『伊勢原観光道灌まつり』をバーチャルの世界でなら…!と思ったことが活動のきっかけです。私たちはその取り組みをゼミの外にも知ってもらうために、実際に参加して楽しんでもらうために、主にTwitterのツールを活用し、情報発信をしてきました。活動当初は“楽しそう“、そんな気楽な心持ちでいました。しかし、Twitter初心者、且つ、共有アカウントの運用経験がない点から、挫折の繰り返しでした。
“ツイートのリアクションが少ない” “タイムラインに流れている数すら少ない”
数値の結果を見ては拡散力の弱さに頭を抱えました。その責任転嫁を「フォロワーが少ないから」といったいい加減な解釈で終わってはならない、そのように思った私たちは「投稿時間や曜日」などの投稿するタイミングに主な原因があるのではないかと考えました。当時のTwitter運用を振り返ると、投稿数を増やすことを目的に置き換え、思いついたら投稿し、“決められた時間に投稿していなかった“ からです。つまり、見てもらいたいユーザーに情報が届かなかった可能性が高いと捉えました。そこで、今回は「投稿時間」と「平日」「休日」のそれぞれを組み合わせ、反応に違いがあるのか、傾向はあるのかを分析していきたいと思います。併せて、事例に対する反応の違い、共有アカウントの運用をした「組織」の振り返りについても取り上げていくので、参考にしてみてください。
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インプレッションとエンゲージメントの意味と注目ポイント
始めに用語の説明に入ります(※下記の分析で使用するものはインプレッション数とエンゲージメント率とします)。
それぞれの役割を踏まえ、ツイートを振り返る時に注目しておくべきポイントは以下の通りになります。
投稿の目的 | 主情報 |
情報を見てもらいたい・知ってもらいたい | インプレッション数 |
いいねなどのリアクションがほしい | エンゲージメント数 |
ユーザーの関心や共感度の傾向を知りたい | エンゲージメント率 |
投稿からの傾向分析
私たちが学園祭期間(10月3日から11月7日)までのおよそ1カ月の間に投稿した全53投稿の時間帯別のインプレッションとエンゲージメント率について見ていきます。
インプレッション・エンゲージメントの総合分析
グラフを見ると、インプレッションは7時、18時、20時の順に数値が高く、エンゲージメント率は10時、21時、17時、7時の順に数値が高くなっていることが分かります。
インプレッションが朝や夕方に数値が高くなる要因としては、通勤や通学の時間帯と重なり、比較的スマートフォンなどに触れる機会が増えやすく、日中は仕事や学業などで拘束されている時間が発生することが多いため、利用する時間に制限があると考えられます。一方、エンゲージメント率はインプレッションと比べて差が小さいことが分かります。この要因としては、インプレッションは投稿がタイムラインなどで表示されることを意味し、ユーザーが見ている時間帯に影響しやすいが、エンゲージメント率は「反応をもらった数」に影響するため、時間帯との関係性が低いことから「投稿内容の質」が必要ではないかと考えられます。そのため、いいねなどの反応を得るには「投稿の質」を意識した発信が鍵になると考えました。
<仮説・検証>
私たちは、全体の傾向を見て「特定の時間帯に数値が集まる傾向にあったのは通勤通学などでスマホを触る時間が増える事が要因」だろう、と仮説を立てました。
まず、電車内ではスマホを利用するかというアンケートに対して、500人の回答をもとに調査を行ったデータではおよそ94%の人がスマホを利用しており、暇が出来た際などの時間つぶしにはスマホが多く活用されている事がこの結果からもわかります。
次に、実際に一般的に電車を通勤で利用する人はその時間を使って何をしているのかを同じく500人(複数回答可)に向けて調べたデータを見ていくと、電車通勤では、1位.SNSの閲覧書き込み(199票)、2位.ニュース・天気のチェック(194票)、3位.ゲーム(99票)とスマホに触れて行う事が上位にランクインしています。
票数としても上位二つが飛びぬけており、大半の人が通勤時間帯にSNSを暇つぶしに利用する事が増えるコンテンツである事が証明されました。
これらの結果からも通勤時間帯はSNSを見ている人が増えるため、この時間帯に向けて投稿を発信する事はインプレッションを増やすには効果的であると言えるのではないかと考えられます。
平日 傾向分析
次に、平日と休日を分けて、時間帯別に見ていきます。
平日のインプレッションは、7時、12時、15時、18時、20時が高くなっています。このことからも平日は移動や休憩などのスキマ時間や帰宅後にSNSを見られることが多いことが、結果からも感じられます。
しかし、エンゲージメント率はインプレッションに対して、特別どこかの時間帯にとびぬけている傾向がありません。このことから、私たちは今回の活動でインプレッション数の高い時間帯に質の高い投稿を流してエンゲージメント率を向上させられなかったという反省点だと言えます。インプレッションが高い時間帯に投稿することはエンゲージメント率を高める要因の一つですが、実際に反応を増やすには「投稿の質」によって左右されることが多いと言えます。
総括として、平日は朝の移動時・昼、15時の小休憩・夕方以降にインプレッションされやすい傾向があるが、エンゲージメント率は時間帯による傾向はなく、投稿内容から受ける影響が大きいと考えられます。
休日 傾向分析
続いて、休日の傾向について分析していきます。
インプレッションは平日に比べて全体的に数値が集まっていない傾向があり、朝10時、12時から14時の間、19時が高くなっています。休日は平日よりも一日の中で、自由に過ごすことができる時間が多く、隙間時間という概念が弱いことから、どこかの時間帯で集中的にインプレッションが集まることが少ないのではないかと考えました。このことから、平日ほど大きな変化はないが、休日は昼食前後や夕食前後の息抜き程度にSNSを見るユーザーが増えているのではないかとも考えられます。12時に多くインプレッションを集めていた平日とは異なり、休日では12時から14時にかけて微量ずつ増えている傾向があり、個々の生活リズムが異なることから、平日に比べて行動時間帯の幅が広がっていると予想できます。
エンゲージメント率は10時と21時に高くなる傾向があります。この要因としては、休日の起床時間が平日に比べて遅くなるユーザーが多く、活動を開始する時間帯が平日に比べて遅いことや休日であることで夜更かしをしやすく、SNSに浮上する時間帯も遅くなることが考えられます。
全体として、平日のように集中的な数値の集まりがない要因としては、休日特有の生活リズムがあるユーザーが多く、活動時間が分散したことが一つの要因として考えられます。
<仮説・検証>
私たちは分析の結果から平日に比べて休日の数値が分散するのは一日フリーな時間が多いこと・休日である事で生活リズムが後ろにずれやすいことという仮説を立てていました。
こちらのグラフは、青い棒が就寝時間、赤が平日の起床時間、黄色が休日の起床時間となっています。
平日は6から7時台に起きる人が多く、平日のインプレッションが7時に高くなっていた要因も寝起き直後の時間での活用などが影響しているのではないかと考えられます。
休日について見ていくと、8時台に起きる人が最も多く、次点で7時台となっていますが、平日との決定的な違いとして9時以降に起床する人がそれぞれ倍以上に増えている事にあります。
こ の結果からも全員ではないものの大半の人が平日に比べて起床時間は遅くなる傾向にあると言えます。
また、休日の過ごし方についてアンケートを見ると、
大半の人がのんびりするなど体を落ち着かせる思考の回答をしており、これらに回答している人は休養の意味を込めて起床時間が遅くなっていると予想されます。起床時間が遅くなることによって、中途半端な時間に朝・昼を兼ねた食事をとるなど、生活リズムに安定性がなく、好きな時に行動を起こせる状態にあるため、どこか特定の時間帯に息抜きが集中する事がないのではないかと言えます。
また家族全員で盛り上がるや充実感を求める人もおり、買い物や外食、イベント参加など外に出て何かを行う傾向にある人も存在します。外出時は食事の時間帯に店などの混雑に巻き込まれることを避けるために時間をずらしていくという傾向もあり、これによってそれぞれの生活リズムと隙間時間に差が生まれていると考えられます。
以上の結果から、平日と休日の傾向に差が出た要因は
・平日に比べて休日は起床時間が遅くなる傾向がある。
・家にいる人は、起床の遅れから平日と異なる生活リズムになりがち。
・休日は外出をしたい人も多く、スケジュールに個人差あり。
という事がわかりました。
3の結果と事例から視る「投稿の質」
上記までの分析結果から、私たちはエンゲージメント率を上げるためには「投稿の質」を高める必要があると考えました。エンゲージメント率は「目に触れる機会でどのぐらいの反応があったのかの割合」を意味します。そこで、エンゲージメント率と事例との関係性を中心に見ていきます。
まずは、約1か月間のエンゲージメント率です。
エンゲージメント率 | % |
平均比率 | 8.2 |
最高比率 | 21.51 |
最低比率 | 0.96 |
最高比率と最低比率の数値を比較すると、大きな差が開いていることが明らかです。この差が「投稿の質」に関係している可能性があります。
次に、エンゲージメント率上位6つの投稿 を見ていきます。文字数、絵(または顔)文字・画像(または動画)・ハッシュタグの有無の4つのカテゴリーを以下の表に示しました。すると、傾向としては文字数100文字以内が多いこと、絵(顔)文字・画像(または動画)・ハッシュタグを活用していることが分かりました。
しかし、それぞれを活用するだけで、反応を多く得られた理由とは言い切れません。
そこで、事例の中でエンゲージメント率が高かったもの(再掲含む)の特徴、あるいは、エンゲージメント率の高低と反応の違いを深堀し、紹介していきます。
※「%」は実際のエンゲージメント率であり、参考のために使用したにすぎません。また、エンゲージメント率の高低は平均(8.2%)との差を基準としています。
★画像や動画を最大限活用するための方法を探る
単に「画像」として載せるのではなく、特徴を持たせた画像または動画、それに伴う文章の展開が投稿する上での肝ではないかと感じさせてくれます。
★ハッシュタグ(#)やキーワードを活用する
※比較するツイートの内容は考慮しないものとします
実際のところ、ハッシュタグの効果はあるのだろうか。まずは、英文同士の投稿になりましが、比較していきます。
上の表のエンゲージメント率に着目すると、ハッシュタグを活用している投稿(左)の方が高くなっています。しかし、どちらもエンゲージメント率が低いため、ハッシュタグの利用「だけ」では効果に限界があるのかもしれません。日本語でのハッシュタグがある投稿(下の表)からも低いことが分かります。
★ハッシュタグ(#)やキーワード自体に「オリジナルティ」を出す
画像のように、私たちは、「バーチャル道灌まつり」を多用してきました。
(ハッシュタグとキーワード含めた使用回数:39回/53回)
機能としては、ハッシュタグへのクリック、または検索のアクションによって、「話題のツイート」「最新」などの項目から同様のワードが含まれている1投稿以上のツイートを確認することできます(左の画像)。そのため、投稿ごとに活用していくことで、私たちの場合は、何に対して積極的に取り組んでいるのかをフォロワーに認知してもらいやすくなるだけではなく、そのワードに興味を持ったユーザーが複数の投稿を気にしてみてもらえる可能性も高まります。
★トレンド入りの場合は「タイムリー」且つ画像(または動画)も活用する
トレンドに入るものは、多くのユーザーが活用している、あるいは見ている人が多いことを意味します。投稿総数が多くなるため、情報が流れてしまいがちである一方、アカウントからタグの存在をフォロワー内に間接的に知らせる役割を果たすだけではなく、タグからアカウントの存在をフォロワー外に知ってもらうことに繋がります。
事例はどちらもハロウィンのイベント日でトレンド入りしたハッシュタグを活用しています。しかし、双方のエンゲージメント率に差が生まれていることが分かります。期間中に投稿すれば良いわけではなく、「投稿の質」として画像の活用は最低限必要なことだと学びました。
他、「期間中」に対する投稿というよりは、「情報の解禁」に対する投稿もあります。これも「タイムリー」且つ画像(または動画)の活用が求められます。今回は、情報解禁後の即日活用&即投稿を心掛けました。すると、エンゲージメント率は10.71%と、上記のハロウィンほど上回りませんでしたが、反応は高い傾向があることが分かります。また、Twitter公式アカウントから入手した情報であったため、ツイート本文中にメンションを活用したところ、そのアカウントから反応(いいね)をいただきました。
アカウントと関連性を見いだせるようなトレンドや最新情報のこまめなチェック、そして、それに伴う投稿のタイミングを見計らうことで、反応を得られる可能性は異なる、と分かりました。(因みに、ハッシュタグを文中で使用する場合は、ハッシュタグの語尾の後に1マス開ける心掛けが必要です。実際、Twitter初心者の私たちは見落とすことが何度かありました。)
★アカウントらしさを引き立たせるツイートとそれに伴う画像選びを意識する
私たちはゼミに所属する大学生なので、以下のような投稿で学生らしさを表現しました。
★インプレッション数の多い時間帯を把握し、そのタイミングに投稿する。
どんなに「投稿の質」を高めても見るユーザーがいなくければ、拡散されるどころか反応を貰える可能性は低くなります。そのため、見る人が多い時間帯の傾向をインプレッションのデータから読み取り、その時間帯に投稿すること重要だと考えました。
(私たちの場合は分析した結果、以下の時間帯を意識すべきでした↓)
実際、「予約設定」という投稿したい時間帯に予め指定することで、自動でその時間に投稿してくれる機能が備わっています(注意:アプリではなくブラウザ版です)。そのため、投稿のし忘れを防ぐことができます。通常通り新規のツイートする状態から、以下の画像の指定部分をクリックすることでその後の時間設定を可能にします。
共有アカウントの運用をした「組織」の振り返り
当時の状況
組織 | 私たち2人を含めて5人 |
情報共有の手段 | 全てオンライン (会議:Zoom、その他:※Slack) |
最低限度の取り組み(当初) | 1日最低1ツイートで曜日ごとに分担する |
最低限度の取り組み(変更) | 投稿案を思いついた者がツイートする |
投稿までの手順 | ①投稿前日までに投稿案の共有 → ②メンバーで修正箇所を確認 → ③修正 → ④再確認(or再修正&再確認) → ⑤投稿→ ⑥投稿完了の報告 |
~良かった点~
◎ 自分ひとりでは思いつかないような投稿文やスタイルが生まれ、互いに刺激し合えた点
◎ 1人の視点だけではなく、他のメンバーの考えを含めたツイートができた点
◎ Twitter上での1つの反応に対する喜びを共有できた点
~問題点~
△ 投稿する時間帯を明確に定めていなかった点
△ どのターゲットに対して情報を発信したいのかが明確でなかった点
△ 前日までに投稿案が完成できておらず、その後の手順に遅れが生じた点
△ 曜日分担制が廃止され、積極的に投稿内容を考える人が減ってしまった点
△ 投稿完了の報告後、全員で良かった点などを評価し合わなかった点(思っただけに留まった)
「投稿の時間帯を統制できなかった」「投稿の質が不充分であった」「そもそも、投稿回数すら増やすことができなかった」というのは
“組織の基盤が不安定だった”
ことが考えられます。個々のモチベーションは取り巻く環境によって変動するため、それを意図的に持続させるには限界があります。モチベーションに頼らず、組織の基盤の安定を図ることが重要です。複数に該当する問題点から共通して考えられるのは、「共有する内容を具体的に設定していなかった」ことだと捉えました。このことから、以下の4点を共有する上で欠かせない主な要素とし、以降の活動で心がけていきたいと思います。
① 組織全体の目的・目標・取り組みに対する姿勢など具体的な「共通認識」
② 個々の役割に対する達成度合いなどの適時「フィードバック」
Ex) 共有ファイルに個々で簡単に記す
③ ②に対する自主的な即座の(リ)アクション
Ex)投稿者の状況確認、投稿完了後の感想を述べる
④ ①②③を苦にならないための習慣化
まとめ
今回はインプレッション数とエンゲージメント率、事例に対する反応の違い、共有アカウントの運用をした「組織」の振り返り、といった3つの観点から私たちの活動を振り返りました。
【インプレッション数とエンゲージメント率から分かったこと】
・「インプレッション数」は平日と休日で増えやすい時間帯が異なる可能性が高く、「エンゲージメント率」は時間帯の影響は低い傾向があり、「投稿の質」に起因する可能性が高いこと
【事例に対する反応の違いから分かったこと】
・反応の良し悪しはエンゲージメント率の高低から読み取れ、「投稿の質」と関係する可能性が高いこと
・画像は投稿内容を引き立たせる役目を果たすものとして効果的であること
・ハッシュタグは補佐的な役割を果たすこと
・トレンドや新作情報に対応する投稿はタイムリーに、且つ、コンテンツでも魅せること
・アカウントらしい投稿の反応率(エンゲージメント率)が高い傾向があること
【共有アカウントの運用をした「組織」から分かったこと】
・投稿が自分を超えた他者の視点も含むため、新鮮且つ刺激的で、外部からの具体的なアクションを自分ごとのように喜び合えたこと
・投稿に対する反応の少なさは内部環境(組織)の問題としても考えられること
最後に
この報告書では私たちが実際に活動して得た結果をもとに記しています。Twitterアナリティクス(インプレッション数などを確認できるTwitter内での分析ツール)の機能を始め、今まで見逃してきたデータと向き合うことができました。Twitter運用もまだまだ未熟で、経験不足であることに変わりがありません。それでも、バーチャル道灌まつりに関する投稿に反応をくれた方々や実際に一般参加してくれた方々のリアクションから、私たちの活動に意味のあるものであったと身に染みて感じることができました。コロナ禍であってもなくても、オンラインでの共有アカウントの運用を引き続き行い、邁進していきます。
以前の私たちのように「SNS『Twitter』で発信したいけど、フォロワーが少ないから」と感じている方にとって、少しでも活動に対して前向きになれば幸いです。
<参考・引用文献>
電車通勤中のスマホ利用の意識調査
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000041309.html
睡眠に関するアンケート調査
https://www.asmarq.co.jp/data/ex1907/
執筆:橋本ゼミ10期生 山内愛弓 山口翼