こんにちは。橋本ゼミ9期生、2年の小林です。
いきなりですが、私達にとって「まち」とは何でしょうか。私は大学2年の夏「大学生まちづくりコンテスト」に参加しました。観光に力を入れた持続可能なまちを作るという内容のコンテストだったのですが、入賞などの目に見える結果を出すことはできませんでした。非常に悔しかったのですが、今思うと普段から自分の住んでいる「まち」のことさえ考えず、知りもしない大学生なのだから当然の結果だと思います。(笑)
ではそもそも持続可能なまちとは何なのでしょうか。そしてなぜ今それを考えなくてはいけないのでしょうか。私のように自分の住む「まち」について知らないという人は多いのではないかと思います。私は地域に関心を持ち、地域とつながることが自分らしい状態でいられることにつながると思っています。あなたがこの記事を読み、自分の住むまちについて考えるきっかけになれば幸いです。
目次
なぜ、今考えなくてはいけないのか
近年、SDGsが採択されたことを契機に持続可能という言葉を耳にする機会が増えてきましたが、持続可能なまちとは何でしょうか。持続可能なまちとは誰もが自分らしい状態でいられるまちだと私は考えています。ではなぜ今、持続可能なまちを作る必要があるのでしょうか。答えは様々だと思いますが、私は助けを必要としている(自分らしい人生を送れていない)人がいるからだと考えています。
まちは生活や商業、教育、文化など様々なことの基盤になるものです。基盤が不安定では、その上に住む人が落ち着くことはできません。
しかし私たち市民がいきなりまちづくりというのはハードルが高いように思えます。都市計画や交通システム、衛生問題、災害リスク管理、情報へのアクセス、教育など、まちづくりには多くの課題が複雑に関連し合っているのです。
そこで私は環境や経済などではなく、地域に住む人とそのつながりにフォーカスしようと思います。
住民同士がつながり、サポートし合う
国際的にみて、日本にはつながりが不足しています。内閣府の「高齢者の健康と意識に関する国際比較調査(2015)」によると「近所の人たちと病気の時に助け合う」人の割合はスウェーデンが約17%、ドイツが約32%、アメリカが27%なのに対して、日本はわずか約5.9%、また「近所の人たちに相談したり、相談されたりする」人の割合はスウェーデンが約32%、ドイツが約48%、アメリカが約28%なのに対して、日本はわずか約19%と3カ国と大きな差があることが分かります。
誰もが自分らしい状態でいられるには住民同士がつながり、サポートし合うことが不可欠です。
私が大学生まちづくりコンテストでフィールドワークを行った茨城県神栖市には市内で電車がないため免許を返納した高齢者、自動車を所有しない高齢者が食料を手に入れることが困難であるという問題がありました。また近年、単独世帯高齢者が激増しています。総務省の国勢調査によると65歳以上の一人暮らしの人口は1980年が約88万人だったのに対して、2015年には約592万人と大幅に増加しています。単独世帯高齢者が問題視される要因の一つは「孤独」です。内閣府の「高齢者の健康に関する意識調査」によると孤独死を身近な問題だと感じる人は60歳以上の者全体では17.3%ですが、一人暮らし世帯では45.4%と4割を超えています。
これらの生活に問題や不安を抱える人を少なくするために住民同士がつながり、サポートし合うことが求められます。神栖市は住民全体における65歳以上の人口の割合が20,8%と高齢者が多いいのですが、お話をお聞きした女性議員さんの話によると高齢者がつながりを持てるよう高齢者居場所づくり事業「いこいこかみす」という市内在住の65歳以上の高齢者を対象とした交流の場を作ったところ、想像していたよりも多くの高齢者が日々集まるようになったとおっしゃっていました。また友達同士で楽しそうに会話や釣りを楽しむ高齢者の姿を街中でよく目にしました。
私は神栖市で農産物直売所に集まる地元の農家さんや市役所と連携してまちの方向性について考える企業の取締役、地域の飲食店のマスターと楽しく会話をする漁港組合の会長、女性の権利向上のために闘う女性議員など多くの方とお話をさせていただいたのですが、神栖市の方々は皆、地域内での人とのつながりを大事にしていました。また地域の外から来た私達大学生とのつながりまで大事にしてくださり、私自身神栖市を好きになり、新たな居場所ができたように感じました。
このように感じることができたのは「神栖市を持続可能な観光地域にしたい」という私達の思いを、神栖市に住む方々がサポートしてくれたおかげです。
地域には認知症のある方や障害のある子を育てる方、LGBT、外国人労働者などさまざまな人がいます。助けを必要としている人は必ずいて、そういった人たちも含めて誰もが自分らしい状態でいられるために住民同士がつながり、サポートし合う必要があるのだと私は考えます。
また人とつながることで誰かを助けられるだけでなく、自身にもよい影響があります。
ここでは三つその例を上げていきます。
まず一つ目は友人の存在が幸福度を高めるという点です。友人がいる人といない人では幸福度に違いがあり、友人がいること自体が幸福度を高めます。「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれたハーバード大学教授のニコラス・クリスタキス教授によると、直接の友人が幸福だと、本人の幸福度も15%アップするというそうです。また幸福は友人の友人の友人にまで連鎖するようです。
二つ目は、心配してくれる人の存在が生死に影響するという点です。つながりがないということはタバコや酒、運動不足以上に生死に影響を及ぼすと言われているのです。
そして三つ目は、人と繋がることで生産性・創造性を高められるという点です。理由としては、他者から失敗や成功を学び、良い選択が出来るようになることや、違う視点からの摩擦や刺激による新しいアイデア・視点が獲得できることなどが挙げられます。
人と人とのつながりは他にも利他性が高まるなどの効果を期待することができ、助けを必要とするしない関係なく、人々の生活の質を大きく改善する効果があります。
コミュニティに参加し、地域・人とつながる
ではどのようにして地域・人とつながるのか。方法の一つとしてコミュニティへの参加があります。コミュニティには以下のような三つ種類があります。
- 同じ地域に住むことで生まれる地緑型コミュニティ
- 興味・関心の一致により生まれるテーマ型コミュニティ
- 地緑型とテーマ型の融合のタスクフォース型コミュニティ
今地域に必要なのはタスクフォース型コミュニティです。地緑型コミュニティは同じ地域に住むことで生まれるため、より深く関わることができ、強い仲間意識も生まれます。しかし関わり方が難しく、すでに強固な絆で結ばれているため参加するハードルが高いのです。興味・関心の一致により生まれるテーマ型コミュニティは複数参加することが容易で、かつSNSの普及により参加するハードルが低くなっています。地緑型とテーマ型を融合したのがタスクフォース型です。テーマ型へ参加するハードルが低くなったからといって、地緑型の重要性が低下したということではなく、前述のように地域・人とつながることは生活の質向上につながります。タスクフォース型は地域で深く関わることができ、参加のハードルも低いコミュニティです。タスクフォース型のコミュニティに気軽に参加し、その中で地域とつながりができ、より深く関わることができる地緑型に移行するということも考えられます。
何よりまずは地域を知るために、つながることが大切(私自身、多くの方との対話の中で地域への理解を深めていきました)です。つながっていくなかで自分に合うコミュニティが分かり、近くに住む悩みを共有できる友人にも出会えるかもしれません。こういったつながりが地域内で生まれることによって、人々は心の支えを獲得し、人々の生活の質も向上、延いては自分らしい人生を送る事へとつながるのではないでしょうか。
さいごに
私は「大学生まちづくりコンテスト」でフィールドワークをした際に、地域のために活動する方を多く見ました。イベントを企画し、まちを盛り上げようとしたり、女性の権利獲得のために闘ったり、地域には誰かのために行動する人が多くいることを知りました。私自身この記事を出すことで、地域に目を向ける人が増え、少しでも地域に貢献することができたらと思います。
参考文献
筧祐介,「持続可能な地域のつくり方」未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン, 英二出版株式会社, 2019.
田瀬和夫・SDGsパートナーズ, SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界, 株式会社インプレス, 2020.
内閣府,「高齢者の健康と意識に関する国際比較調査,2015,閲覧日 ,2021-1-28 https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/gaiyo/pdf/gaiyo_2of2.pdf
内閣府,「高齢者の健康に関する意識調査」,2018,閲覧日 ,2021-1-27 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_4.html
執筆:橋本ゼミ9期生 小林大介