ロジカルと農業と人材育成

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 2013-06-16 17.40.54

 Amazon.co.jp: ロジカルな田んぼ 松下 明弘著を読んだ。

 本書の特徴は、そのタイトルが示すとおり、米作りを極めてロジカルにやっている事が細かく記してある点にある。農業について、様々なイメージがあるだろうが、その中に「ロジカル」というのは入ってくるだろうか。「のどか」だとか、「エコ」だとか、「自然」というようなイメージの方が一般的かもしれない。しかし、本書を読めば、農業がそんなにたやすいものではないと言うことがすぐに分かる。

 そして、「都会で疲れたから、田舎に帰って農家でもやろう」とか、「就職が決まらなかったら農家にでもなるよ」なんて発想自体が、あまりにもばかばかしいものであると気付くと思う。農業にはロジカルな発想に加え、根気や根性が必要だと言うことを。

 著者である松下氏は、米作りの前に米が育つ田んぼ作りに、全神経を傾けている。例えば、田んぼを水平を取ると言うことを「中毒のように」行っているのだという。なぜ、水平にしなければならないのか、その答えは本書の中に「ロジカル」に書かれている。そのロジカルというのは、「教科書に書いてあった」という事ではなく、理論や他者の経験を自らの経験にした形で導き出されている。だから、わかりやすい。そして、「言われてみれば当然」という形に収まっているのだ。

 本書を読んで感じるのは、何事も「やってみて」、そして「考える」と言うことがいかに大切かということである。米作りは、いくら頑張っても一年に1回しかできない。職業人生で言ってもPDCAを回せる回数はかなり限られている。そのために、その1回1回を大切にしていこうという姿勢がそこかしこに現れている。それは、きっとどんな仕事でも同じだろう。たとえば、私のように教員という立場としても1人の学生に接する時間は4年間。職業人生を通じてもそれほどたくさんの機会があるわけではない。一回一回からどれだけの知恵を得られるかによって大きく変わってくるはずだ。

 本書の中ではTPPなどの今日的課題についても述べられている。報道されている内容とは少し視点が異なるだろう。そして、その違いこそが重要だと思う。つまり、複眼思考であり、ロジカルに考えるという事につながるからだ。

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 なぜか、私の周りには専業の農家をしている友人が多い。実家の農家を継いだ者、外資系金融機関を辞めて農家に婿入りした者。その境遇は様々であるが、ひとつの職業として、その奥深さを知る機会になった。そして、きっと何か一緒に面白い事が出来るのではないかなと思っている。 

 

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