最もシンプルなリフレクションムービーの作り方

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ワークショップなどの何らかのイベントを開催した場合、その場がいかの盛り上がったとしても何が盛り上がったのかとか、どういった学びがあったのかは、時間が経つに従い薄れてしまいます。そのため、「その場」を記録に残す事が必要になります。実践する最中に記録を行う事を「リアルタイムドキュメンテーション」と呼びます。

その際に残すものとしては様々なモノがあります。たとえば、模造紙を使ったり、付箋紙(ポストイット)を使ったりしてその場での時間の流れを記録していきます。今であれば、Twitterのつぶやきをまとめたりします。

そのひとつの方法として、写真やビデオを使った「リフレクションムービー」があります。結婚式の最後に結婚式のその場の写真を使ったエンドロールが流れる事がありますが、そちらをイメージしてもらえると良いかと思います。ワークショップの場面を写真やビデオで撮り、それをムービーにまとめるのです。

リアルタイムドキュメンテーションでリフレクションムービーを作る場合の注意事項とまではいきませんが、私が実践した内容について、まとめていきたいと思います。もっと、手の込んだやり方も当然あると思いますし、クオリティが高いモノもあると思いますが、学部生でも十分に作成可能なレベルを想定しています。

【準備するモノ】

・Mac (私はMacBookAir Mid2011)
・iMovie
・デジカメ複数台 (できればデジタル一眼レフカメラ)
・プロジェクター
・スピーカー等

【作成の手順】

<ワークショップの事前準備段階>

1.ワークショップ全体をイメージする
まずは、ワークショップやイベントの全体像をイメージします。私が行った実践は本学の1年生向けのワークショップで、1泊2日のものです。バスでの移動や食事の時間等もありますので、どういった場面でどういった絵がとれるのかを想定しておきます。
これは、ある意味でワークショップ全体をいかに盛り上げるかという事とほぼ同義かも知れません。シリアスに考える場を撮るためには、当然場がシリアスになっている必要がありますし、和んだ雰囲気を撮るためには場が和んでいる必要がある訳です。
準備段階でどういった雰囲気になるのかを想定しておきました。

2.iMovieにプロジェクトを作成し、BGMを挿入する
今回は、Macに標準で搭載されているiMovieを使いました。このソフトを使った理由は、以下の2点です。
・標準搭載されているので追加の投資が必要ないこと。
・ファイナライズせずに動画が流せるため、編集に時間をかけられる

iMovieの個別の使い方については、割愛いたしますが、まずはワークショップにあった曲を用意しておきます。場に合った曲を複数用意しておくと良いかと思います。

iMovieで曲を入れる事により、ビデオの尺が決定したことになります。この尺に合わせる事で、編集における制約条件ができます。結果的にここで尺を決めておくことで、何を採用し、何を削るのかがはっきりします。

加えて、曲全体の中でどういった流れを作るのかをイメージしておくと良いかと思います。

<ワークショップ当日>
1.写真や動画をとりまくる
ワークショップ当日は、参加者の写真や動画をできる限りたくさん撮ることにつとめます。この際、複数人いた方が多様な絵をとれると思います。また、ファシリテーターとは違う人が行った方が良いでしょう。しかし、写真を撮る人もプログラムの主旨や意図を理解している必要があります。

写真を撮る技術も当然必要でしょうが、このワークショップでは「どんな絵」が取りたいのかを理解することが必要です。言い換えれば、ワークショップの意図を理解しているか否かです。

たとえば、「雰囲気が堅い所から、段々と和んでいき、最終的に全体でひとつのことに集中して取り組んだ」というようなワークショップだったとします。そのときには、以下のような写真やビデオが必要です。

1.雰囲気が堅い絵
2.和んでいくきっかけになる絵
3.バラバラと集中している絵
4.全体が集中してきた絵
5.集中している事で見えなかったであろう絵

この内、3番や5番というのが、意識していないととれないモノなのではないかと思っています。リフレクションムービーとは、リフレクションしなければわからなかった「何か」をどうやって提供するのかに意味があるのではないかと思うからです。

また、もう一つ大事にしているのは,できる限り参加者全員を写すという事です。ひとは、まず自分の写真を探すというのを聞いた事があります。そのため、自分が映っていないというのは、それだけで不満要因となり得ます。できる限り全員を撮れるように心がけています。

なお、動画の取り方については自分でも確たるモノを持っていません。使う上で難しい所がいくつかあるからです。ひとつは、編集が難しいという事、もう一つは、Macへの取り込みなどに時間が掛かる事です。

そのため、基本的には写真をベースにしました。むしろ、写真を組み合わせる事で動きを表現したいと考えました。自分ができているとは到底思えないのですが、ひとつ参考になるお話を紹介します。

それは、映画監督の北野武さんが、撮影方法について述べていたものです。うる覚えで恐縮ですが、こんな内容でした。

 たとえば3人の殺人を犯した人の映像を撮りたい時に、素人は、殺人シーンを3回撮る。しかし、コレでは間延びして、映像として面白くない。むしろ、殺された人数だけの死体の映像を見せた上で、最後に犯人が血のついた包丁を持って歩いているシーンを流せば、見ている人はこの犯人が3人を殺したのだと想像できる。映画ってこういうモノだよ。

もちろん、こんな技術はありませんが、たとえば「グループで真剣に議論した」というシーンを撮りたければ、「議論している人達の写真」と「議論している内容(メモとか、模造紙)」を撮るだけで伝えられるのではないでしょうか。無理に、議論している映像(音声)を入れる必要は無いのだと思っています。

なお、反省点ですが、自分が写真や動画を撮っていても、使えるものはその一部です。ピンぼけとか、画面が動いてしまい気持ちが悪くなる映像になってしまうモノが多々あります。この辺は技術が必要です。以前、ある方にアドバイスを頂いた事も紹介します。それは、「写真は動きを撮るように、動画は静止画を撮るように撮るとうまくとれるよ」というモノです。中々うまくいきません。

2.編集する
最後に編集の作業です。リフレクションムービーとしてワークショップの最後に流すのであれば、この作業は完全に時間に追われる事になります。

そこで、この編集作業はいくつかの工程に分けた方が良いと思います。
ひとつは、事前準備段階で述べたように、音楽を入れておくことです。音楽を入れておくことによって、尺が決まりますので、たくさん撮った写真を容赦なく選別することができます。
写真があればあるほど、あれも入れたい、これも入れたいとなりますが、それをいかに抑えるのかは重要な視点です。特に、この場合は時間がありませんので、悩んでいる時間はほとんど無いわけです。容赦なくいけるかどうかは重要です。

次に、ある程度シーンを想定します。
ムービーとして見るからには、何らかの「起承転結」のようなモノが必要です。少なくとも、盛り上がりを見せる所をいかに作るのかは大事な要素でしょう。そのために、事前にある程度、展開を想定しておく事が必要です。

先に述べたように、緊張しているシーンから和んでいくシーンまでにこの程度時間を取ろうといったことを考えておく訳です。しかし、実際には始まってみないとどんな絵がとれるかはわかりません。そこで、想定はしておきつつも、その場で臨機応変に対応していくのです。

実際の編集は、imovieの場合簡単です。タイムラインに写真や映像をどんどんと追加していくだけです。もちろん、もっと凝った編集もできますが、リアルタイムに行う事を考えれば、ここではコレが最も簡単な方法だと思います。
その場合に重要なのは、どんな写真や映像を使うのかです。

結果的に、その場では様々な出来事があった訳です。それを、数分に編集するのですから、そこには編集者の「意図」が大きく入ってくるわけです。ある意味では、ここが一番面白い所かも知れません。やり方仕方によっては、ワークショップ全体を捕らえ直し、気付かなかった事に気付くようなムービーになることもあれば、ムービーがただ流れただけという意味不明なものになってしまうかも知れません。

それには、主催者側の視点だけではなく、当然参加者がどのように感じているだろうかを常に想像して、それに合わせる、それを外す、と言ったことが必要でないかとと思います。そして、あなたの意図を表せる写真や動画を使うのです。

さて、技術的な事を少しお伝えします。
ワークショップなどにおいて、一番の盛り上がりは最後にあることが多いと思います。そのため、最後の盛り上がりのシーンをムービーに入れようとすると、時間が非常に厳しくなります。動画の取り込み、編集などに時間が割けなくなります。敢えて、写真だけで対応すること、画質を抑える事、動画の時間を抑える事などが必要になるかも知れません。一番の問題は最後まで編集ができず、上映が出来ない事です。

リフレクションムービーは、やはりその場で流すことに意味があるのだと思います。自分は、成果物の写真は事前に撮っておき、動画は敢えて時間を限定して撮影することにしました。これにより、取り込みの時間を削減しました。

また、iMovieは映像を流す際にファイナライズが必要ないため、上映の2分前まで編集をする事が可能です。こういった点もiMovieを使うことの利点です。

最後に

リフレクションムービーを作成してみて思うことですが、これは撮影する人、編集する人によって、全く違ったモノができるだろうなという事です。そして、そういったムービーを見ることによって、参加者のワークショップのとらえ方にも変化を与えられるのではないでしょうか。実に多彩な色合いを演出することができるのではないかと思います。

この文章が何の役に立つか不明ですが、たくさんの実践を行って、たくさんのムービーが出来る事、そしてそれが参加者の多様な学びに資する事ができれば大変うれしいです。是非、みなさんにムービーを作って欲しいなと思います。

PS:ここまで書いて、「じゃあ、おまえのムービーを見せろよ」という事を言われそうですが、コレまで作成したものは、映っている写真を考えると公開することができません。個人的にお声がけ頂ければ、いくつかあるムービーをお見せする事は可能かと思いますので、個人的にお声がけ頂きたいなと思います。また、公開を前提としたムービーも作ってみたいと思います。そういった場にはお声がけ頂けるとうれしいです。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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