EnCampでお会いした「ご縁」で、東京都市大岡部研究室の卒展「ご笑待」に行ってきました。
「ご笑待」は、岡部研究室に所属する学生さんが自身の卒業研究を発表する場です。その場所が、横浜の県民ホールのギャラリーで、一般の人も当然参加できる所が特徴的です。東京都市大には行ったことがないのですが、このたび卒業発表に参加してきた次第です。
発表内容としては、街を対象としたフィールドワークだったり、オリジナルキャラクターによる学内でのキャンペーンだったり、ニコニコ動画等を活用した制作と学びのフィールドワークだったりと多種多様です。それぞれ、学生が「現場」で苦労してきた様子が伝わる内容であったので、非常に面白かったです。(既に、3日間の開催が終わってしまったので、行きたくなってしまわれた方には申し訳ない)
個人的に感じた事をまとめておきたいと思います。主に教員としての視点です。
目次
iPadはただの道具
とても印象的であったのが、彼ら(彼女ら)がiPadやMacやデジタルカメラなどを極めて「普通」に使っていた事です。しかも、手書きの絵などと組み合わせて使っているのです。びっくりしたのは、QRコードを「レゴ」で作り、その説明をiPadで行うのです。
<写真は、レゴで作ったQRコード。ご笑待のHPより無断借用 許してください>
iPadを活用した○○というような話を「大人」がすると、何となく肩に力が入ったものになってしまいがちです。しかし、彼らは、「便利だから使う」という極めて冷静な対応をしているように感じました。ひと言で言えば「自然」です。便利だから使う。ツールの使い方としては当たり前の事なのですが、中々そうはならないものです。
極めて自然に使っている様子に、これは「ほっておくのが良いのだな」という事を感じました。変に「こういう使い方をするんだよ」なんて「教えてしまう」事は無駄な事なのです。
語ること、語ること
ひとつひとつの展示を見せてもらいましたが、思い入れが強いからでしょうか、彼らは本当によく「語る」のです。
あるブースで話を聞いていると、関連した話だからと隣のブースに誘われました。そのとき、前の発表者が「もう連れてっちゃうの?」と言うのです。結構話を聞いていたかなと思っていたのですが、まだ話し足りなかったのでしょう。次の予定を入れてしまっていた関係で長くいられなかったので、非常に申し訳ないことをしました。
では、なぜ「語る」のかを考えてみると、それは彼らが「やっている」からではないでしょうか。自分がやったものや、自分がすごいと思ったもの、自分が苦労したものであったからこそ、「誰かに紹介したい」と思ったのだと思います。
その「語り」には勢いがあふれていました。「ここまで来るのは本当に大変だったんだけど、かいつまんで言うと…」という気持ちがビンビン感じるのです。「勉強になりました」「自分も頑張りたいと思います」といった、どの感想でも当てはまるようなつまらない話はないのです。
やはり「現場」で揉まれてきたことがこうさせるのだなと感じ、これは自分もマネしていきたいと感じています。
開かれた場におくこと
きっと、今回の場も学びに繋がったのではないかと思います。一般に開かれた場所で、今まで一度もあった事のない人で、なおかつどんな前提知識を持っているかもわからない人に向けて研究発表をするのは、当然のことながら認知的負荷が高い訳です。中には(私のように)意味わからない問いかけをした人もいたでしょうし、説明しても説明しても「わかってもらえない」人もいたと思います。
「実践」を学びにつなげるためには、それをいかにリフレクションするかが重要です。また、実践を「理論的」に説明してみたり、意味づけてみることも大事な事です。同様に、「実践」を知らない人に「語る」ことにも学びがあると思います。
学部生ですから、(私の目からはとても良く出来ていましたが)100点満点の実践になったと思っている人は少ないのではないかと思います。「こうすれば良かった」とか「ああすれば良かった」という事があるかと思いますが、きっと発表している最中にも発見されたと思います。その気付きが、今後に繋がっていくのではないかと感じました。
開かれた場を用意することの重要性と、そこに向けて努力する学生の「底力」を感じました。
最後に
とても「楽しい」場所を見せてくださった岡部研の方々に感謝いたします。卒業する学生さんも、大学院に「入院」する学生さんもいらっしゃるそうですが、それぞれに今回の研究を活かして欲しいと思いますし、この「縁」を大事にして欲しいなと思います。
今回の見学では、色々と勉強になることがありました。たとえば、「開かれた場での発表会をすることの意義」や「具体的なモノを作ることの有用性」などなどです。ここに至るまでには様々な努力があっただろうなと感じながら、会場を後にいたしました。そして、こういった卒展を自分の研究室でも開けるようになりたいとつくづく感じていた次第です。
様々な気付きがありましたが、一番の収穫は、教員のスタンスとして、学生のことを「笑いながら」「待っている」事が一番重要なのではないかと気付いた事です。なんだか、ほっこりしているのです。