ノマドって結局「東京」のこと? それとも大きな変化のうねり?

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 最近「ノマド」という言葉が「一部界隈」で、よく使われるようになりました。元々は、「遊牧民」という意味ですが、ノートPCだけを持って、カフェなどで仕事をするスタイルの事です。会社に所属している人もいますし、個人事業主の方もいます。

 環境的な要素としては、Wifiを始めとした通信環境の整備、電池でのノートPCの稼働時間が延びたことなどが挙げられるでしょう。以前よりも簡単にこうしたスタイルが可能になっています。

 発言しているのは、スタートアップのベンチャーとか、大学院生だとか、フリーの人達が多いように思います。

SOHOとかとは何が違う?

 こういった言葉は、実は定期的に出てきているように思います。その対象としているものは、実は同じものだったり、近しいものだったりする訳です。たとえば、SOHOなんてのも、実は近しい概念なのではないかなと思います。

 「いや、SOHOとは違うでしょ?」
 という反応が返ってくるかと思いますが、そういったやりとりを通じて「ノマド」がわかってくるのかなと思います。その実「なんとなくカッコいいな」というコトバとして使われているのではないかと思っています。
 
 本エントリーは、@sanu22さんのtwitterでのつぶやきを見ていて、創発されました。彼は、「スタバでキャラメルなんとかを飲みながら仕事するのってどうだ?」と煽っています。確かに別にスタバではなく、近所の喫茶店でもよいのであります。個人的に思うのは、少なくともmacを使う必要はないかと思います ※1。

結局、東京?


 そんなことを考えてみると、実は、極めて「東京的」であるように思います。ひとつには、新しいということを発信していこうという人や新しいものを取り入れようという人が集まっているという意味で東京的だなと思います。もう一方で、実際問題として地方では技術的、雰囲気的に実現しない方法であるからです。

 新しいということを発信していこうということと、新しいものを取り入れようということは、ある種共犯的な関係であり、共存しているものだと思います。どういう人達が発言しているのかを見ていくと、実は何か近しい境遇の人達なのではないかと推察しています。そして、「東京」という街は、近しい境遇の人達を「集め、まとまった」ように感じさせる力を持っているのではないでしょうか。
 
 もう一方では、地方では技術的に難しい面があります。先日、山梨に行ってきましたが、持っていったwimaxは、全く電波を受信しませんでした。PCは、ただのダンベルと同じです。

 他に、雰囲気的にも難しいのです。どんなに、最新式のmacを「ドヤ顔」で使っていても、「世界地図がトイレに貼ってある喫茶店」で、おばあちゃんに「珈琲をいれてもらって」では、いわゆる「ノマド」にはならないのではないかと思うからです。本来、こちらこそノマドの本質的な雰囲気がありますが…

マーケットのサイズの変化?

 これまで、ちょっと否定的に見てきましたが、「ノマド」に否定的かというとそうではありません。むしろ、ある兆候を感じています。それは、「マーケットのサイズ」の変化です。これまで、何らかの形で「ペイ」することを考えた場合、企業に所属して、大きなマーケットを狙っていくというのが当たり前の行動でした。しかし、このノマドが流行る背景には、各顧客のニーズが多様化したことにより、相対的にマーケットのサイズが小さくなってきているのではないかと思うのです。

 小さくなったマーケットで勝負するためには、コストをできる限り低く抑えておく必要があります。そのひとつの形態が「ノマド」なのかなと。

 その意味で、「ノマド」には、サバイブするための戦略という側面が出てきます。それは、個人が個人としてサバイブするという話と、企業がサバイブするための仕組みです。

 前者は、特に何の問題もありません。多様な働き方ができる時代がやってきたと、むしろ歓迎すべきことかも知れません。しかし、後者の場合には、「ノマド、ノマド」と踊らされた先には、過去の「フリーター」的な話が待っているようで、「ぞぞっ」としています。

 なお、前者の場合にも、「人の育成」という視点では問題があると思います。それは、もしかしたら次の時代の「中小組織における人材育成の課題」かも知れないなと思っているので、後述したいと思います。

 ※1:本文章は、macを使ってマクドナルドで書いています。これを自己矛盾と呼ぶのです。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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