厚生労働省による「能力開発基本調査」によれば、人材育成に関する問題として挙げられているのは、上記の図の通りです。上位3つは、「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」「人材を育成しても辞めてしまう」です。
本日は、そのうちの第2位に位置づけられている「人材育成を行う時間がない」という事について考えてみます。
目次
人材育成には時間がかかる?
「人材育成を行う時間がない」ということは、逆に言えば「人材育成には時間が掛かる」という認識が共有されているとも言えます。
熟達化研究によれば、プロフェッショナルと呼ばれる人達は、「Deliberate Practice(よく考えられた練習)」を行った上で10年あるいは1万時間の訓練を繰り返しているとされています。いわゆる「天才」と呼ばれる人もそれだけの努力だったり、コストを割いているという事です。つまり、時間は掛かるのです。
「時間を割くことが出来ない」ということは、それだけで「人を育てるのが難しい」という状況になると言うことです。
なぜ、時間が掛けられないのか
一方、時間が掛けられない理由というのは、人材育成とは別の理由によるものだと思います。至極当たり前の事ではありますが、それは「ビジネス上」の理由です。
他社とのコスト競争に勝つためには、余分な人員を配置出来ない事や、ビジネスや商品自体の立ち上がりから衰退までが早いため、「学び」のための時間を取ることが出来ない、等が挙げられるでしょう。
「試行錯誤をしてみれば良い」と、部下に言ってはいるが「本当に試行錯誤されてしまうと困る」という状況はないでしょうか。
人材育成に時間をとれる日は来るのか
そうした上で考えなければならないのは、「人材育成に時間を掛けられる日は来るのか?」という問題です。
これは、今は不況だが、そのうち景気は上向くという話と非常に似通っていると思っています。景気は上向いて欲しいが、そのための具体策は(たぶん)誰にもみえていないという事です。少なくとも、高度経済成長時代やバブル経済の再来は期待出来ないでしょう。好況が来たとしても、それは昔のそれとは違った形であると思います。
人材育成に時間がとれる日が来るとしても、同様ではないでしょうか。昔のように時間を掛けられる事など、幻想に過ぎないのではないか、ということです。
そのように考えると、「人材育成を行う時間がない」というのは、(多くの組織に取って)短期的な事ではなく、長期的な事ではないかと思います。また、その時間についても「今年」よりも「来年」の方が良くなるでしょうか。逆に、「将来はもっと悪くなる」という未来がみえているのではないかと思うのです。
もし、将来がさらに悪くなるのであるとすれば、それを見込んだ上での施策が必要になるのだと思います。ですから、少なくとも「時間がとれれば○○を行えるのに」というのは無理だと言うことです。今よりももっと条件が悪くなる事を見込んだ仕組みが必要になるといえるでしょう。
中小企業への示唆
現在、人材育成に時間を割けていますか? また、将来はどのように推移すると想定されますか?